組織・人材育成

マネジメントを目標管理の目標とする

病院の経営や運営はマネジメント力にかかっている
株式会社To Doビズ 代表取締役 篠塚 功
先日、主任以上のチャレンジシート(目標管理シート)が、クライアントから送られてきました。主任、師長、科(課)長のすべての目標を読み込み、コメントを書いて戻しています。目標管理制度を中心とした人事・賃金制度を導入してから4年が経過し、コロナ禍でも業績を上げ続け、新規に立ち上げた事業も上手くいっているようです。制度を入れたことで、当初は、長年勤務された看護部長や事務の課長が退職するなどいろいろありましたが、支援を続けてきて、少なくとも主任以上は意欲を持って目標を立て取り組んでいるように感じます。
病院の経営や運営は、部門長や管理職、指導職のマネジメント力にかかっているといっても過言ではありません。そこで今回は、マネジメント力を高めるための目標設定のあり方について考えます。

マネジメントとは何か

マネジメントで大切なことは、結果から原因を考え、そこから目標を明確化して、徹底的に追い求めることです。例えば、筆者は、事務部長時代、救急委員会のメンバーに 「A病院では救急患者を一切断っていないのだから、当院でも断らないように」 と言ったことがありましたが、結果を責めるだけなら誰でもできます。大事なことは、A病院で断らない結果を導き出している原因を知ることと、当院で断っている原因を分析し、A病院の事例を参考にその原因を取り除くための目標を設定し、救急委員会のメンバーの力を借りて実現することです。すなわち、結果を責めるのではなく、結果からプロセスや原因に目を向け、 「学習する組織」 であることが大切なのです。
このようなマネジメントをする上で、マネージャーには、次の3つの力が必要です。1つは 「意思決定」 です。自らの考えで物事を決定しなければいけません。最近でも、決定ができない病院幹部の方にお会いすることがあります。すべての意思決定を病院トップが行っているため、事務部長であっても決定ができないのです。意思決定をすることで、自らの責任も生じ、物事を達成する意欲が出るはずです。2つめは 「リーダーシップ」 です。自部署の業績を上げるパフォーマンス機能と、業績を上げることで組織を壊しては何にもなりませんから、組織のスタッフ一人一人に気を配り組織をメンテナンスする機能を果たすことがリーダーシップだと考えます。3つめは 「動機づけ」 です。スタッフを動機づけるためには、上司はスタッフに次の3つのことが感じられるよう働きかける必要があります。①上司は自分のことを分かってくれている(他者受容感)、②自分ならできる(有能感)、③自分で決めた(自律性)です。マネジメント力とは、知識を身に付ければできるようになるものではありません。実践がすべてです。マネジメントの経験を積むことで力はついてきます。

マネジメントを目標とすることでマネジメントを実践する

師長の目標を見ていると、アクションプラン(具体的な方法や時期)のすべてが、自らやることではなく、主任やスタッフにやってもらうことがスケジューリングされ書かれています。病棟の看護の質を高めるために、A主任に新しい勉強会を立ち上げてもらおうといった他力本願的な目標です。部署の目標であれば、これで十分ですが、師長個人の目標としては、問題ありと指摘してきました。なぜなら、人事評価に使う目標管理は、目標を立てた人が目標を達成したか否かを評価するわけですから、主任ができなかった、スタッフが失敗したから達成しなかったというような目標では、人事評価でいうところの内部条件(内部環境)の影響を受けすぎるので適切な目標とは言えません。また、師長がA主任に指示をすることは目標と言えるのでしょうか。指示を出すのは目標というよりも、師長の本来業務です。
しかし、師長が、看護の質を高めるために、今年は何をするかを考え、それを何名ものスタッフの力を結集して実行し達成するというマネジメントは大事なことです。また、そのスケジュールを立てることが、マネジメント力を身に付けることにもつながりますから、すべてを否定するわけではありません。先述のマネジメントの基本を意識して、どのように指示を出すのか、進捗管理を行う上で、どのようにスタッフと関わるのか、達成において特に力を入れるべき部分については、自らが率先垂範して行い、手本を示すといった自らやるべきことも書かれていれば、十分目標管理の個人目標として耐えられると考えます。今回送られてきた師長の目標を読むと、マネジメントを行うことを明言して目標とし、その中には、この部分については、自分が実行するということが明確に書かれている目標が散見され、毎年の研修効果を感じます。

【参考:リーダーのためのモチベーション・マネジメント(岩崎玲子、PHP研究所)】


【2024. 8. 15 Vol.598 医業情報ダイジェスト】