介護

通所リハの基本サービス費の見直しと要支援に対する減算

運動器機能向上加算の包括化
株式会社メディックプランニング  代表取締役 三好 貴之

▼基本サービス費の見直し

令和5年10月26日の介護給付費分科会では、通所リハビリに関する議論が行われました。そのなかで、「論点2.リハビリテーションの充実に向けた基本報酬の見直し」については、基本サービス費の決め方を今までの「規模別」「時間区分別」を見直す案が出されています。通所リハビリでは、大規模型は間接経費の効率化が可能であるため、大規模型になるほど、基本サービス費が減少していく仕組みになっています。
しかし、「令和4年生活期リハビリテーションにおける適切な評価の在り方に関する調査研究事業調査報告書」によれば、大規模型では、通常規模型と比較して、リハビリ職の配置が多く、かつ、リハマネ加算の算定率が高いことが分かりました。つまり、大規模型では、リハビリ職を「手薄く配置」したり、手間暇のかかるリハマネ加算は算定しないのではなく、利用者の必要性に応じて、しっかりリハビリを提供しており、決して、経費の効率化は図れていないのではないかということです。
特に月の利用者数が901人以上の大規模型Ⅱでは、令和3年の収支差率が「0. 3%」と他の通常規模型、大規模型Ⅰと比較すると一番、低くなっています。よって、大規模型だけになるのか、通常規模型も含めるのか現時点では分かりませんが、今までの「規模別」「時間区分別」の基本サービス費を見直すことになります。

▼ドナベディアンの質の評価が導入

では、今後はどのような指標になるのでしょうか。おそらく、医療の質の評価でも用いられている「ドナベディアン・モデル」が導入され、「構造(ストラクチャー)」「過程(プロセス)」「結果(アウトカム)」をバランスよく評価に組み入れることが予測されます。例えば、「構造(ストラクチャー)」であれば、リハビリ職の配置数(3職種配置)、介護職員配置数などです。「過程(プロセス)」では、リハマネ加算の算定率、居宅訪問件数などが予測されます。しかし、一番難しいのが「結果(アウトカム)」です。「令和4年 生活期リハビリテーションにおける適切な評価の在り方に関する調査研究事業調査報告書」によれば、ADL指標であるBarthel IndexやIADLの指標であるFrenchay Activities Indexによって、一律アウトカム評価とするのは難しいとしており、どのように評価するのかが今後、注目されます。

▼事業所評価加算の見直し

次に、筆者が注目するのが「論点3 介護予防通所リハビリテーションの質の向上に向けた評価」です。前回の介護報酬改定で、要支援のなかでも、利用期間が1年を超えるものに対しては要支援1で20単位/月、要支援2で40単位/月減算となりました。これは、要支援者では、おおよそ6か月程度でADLの向上が止まり、それ以上の期間は「維持目的」となるためです。しかし、利用者のADL維持のための予防リハビリも通所リハビリの重要な機能であり、一律、期間で減算するのではなく、ADL維持も評価すべきだという意見が出ました。要支援に対するADLの維持改善の評価としては、事業所評価加算(120単位/月)がありますが、これは、直接ADLの維持向上を指数にしておらず、介護度の変化をみています。ここ数回の介護報酬改定のなかで、介護認定の期間が12か月だったのが、現在は、48か月まで延長しており、1年単位での介護度としての変化が表れにくく、算定率も9.8%と非常に低くなっています(図)。よって、この事業所評価加算の算定要件を変えることが考えられます。

▼運動器機能向上加算の包括化

また、「論点5 運動器機能向上加算の見直し」では、要支援に対する運動器機能向上加算(225単位/月)の算定率が89.7%もあるため、基本サービス費に包括する案が出ています。運動器機能向上加算の225単位がそのまま基本サービス費に包括されればよいのですが、今までの介護報酬改定の傾向をみるとある程度、減算されて包括される可能性も十分に考えられるでしょう。よって、要支援に関しては、「1年超えの減算+運動器機能向上加算の包括化減算」のダブル減算があるかもしれません。
対策としては、まずは利用者を増やしていくことです。特に短時間の利用者を増加させれば、基本サービス費や加算が減算されても、収益は伸びます。また、要支援に対しては「手厚い個別リハビリ」ではなく、自分で自立支援ができるように、自主トレーニングやグループリハビリも活用して、効率的にリハビリが提供できる体制が必要となります。




【2023. 12. 15 Vol.582 医業情報ダイジェスト】