介護

令和6年度介護報酬改定 訪問・通所リハビリの開始時が大幅変更

訪問・通所リハビリの医療連携強化
株式会社メディックプランニング  代表取締役 三好 貴之
1月22日の介護給付費分科会で令和6年度介護報酬改定の諮問が行われ、改定項目や単位数が明らかになりました。今回の介護報酬改定では、訪問看護、訪問リハビリ、居宅療養管理指導、通所リハビリに関しては、診療報酬改定と合わせて6月施行になりました。これは、この4事業が医療との連携強化の項目が多くあるためです。
また、処遇改善加算に関しては、非常に分かりにくかった3つの処遇改善加算が1本化されて、こちらも6月1日施行になりました。

▼訪問介護と定期巡回は減算

今回の介護報酬改定は事前に改定率+1.59%に加え、処遇改善の一本化や光熱水費への手当てとして他に+0.45%の改定率が示されており、全体として、ほとんどの事業所の基本サービス費が増加しました。一方、訪問介護と定期巡回・随時対応型訪問介護看護の2事業に関しては基本サービス費が減算となり、業界団体からの反発や事業からの撤退も起こることが予想されます。厚労省は、これらの事業に関しては、人件費は処遇改善加算の加算率を高めることで人材確保や賃上げは可能だとしていますが、事業所の運営には、職員の給与以外にも事務所の家賃や車のガソリン代など経費がかかり、これらは、基本サービス費本体から捻出することになります。どれくらいこの減算の影響が出るか分かりませんが、やはり基本サービス費本体の減算は、「将来への不安」を助長するものであり、事業からの撤退を検討する事業所も出てくるでしょう。

▼訪問・通所リハビリの医療連携強化

今回の改定でたくさんの改定項目が設定されたのが、訪問・通所リハビリです。診療報酬でも今回、リハビリに関する改定項目が多く設定されています。今までの改定では、リハビリ実施計画書の様式を変えながら医療と介護の連携を促してきていましたが、今回は、計画書を使った連携から、「Face To Face」の連携へ一歩前進しました。具体的には、退院後に訪問・通所リハビリを利用する場合は、訪問・通所リハビリは、医療機関からリハビリ実施計画書を取り寄せた上で、訪問・通所リハビリ計画を作成することが義務化されました(図)。しかも、これは運営基準となったため、これを怠ると運営基準違反となります。

さらに、訪問・通所リハビリのリハビリ職が入院中の患者の退院時カンファレンスに参加した場合、「退院時共同指導加算 600点単位」が新設されました。これは、診療報酬改定でも退院時共同指導料2の要件に「訪問・通所リハビリテーション事業所の医師・理学療法士等の参加を求めることが望ましい旨を要件として追加する」とされ、診療・介護報酬が合わせて改定されました。
また、訪問・通所リハビリを居宅サービスに組み入れるためには、ケアマネジャーは「入院中の医療機関の医師による意見を踏まえて、速やかに医療サービスを含む居宅サービス計画を作成することが望ましい」とされました。これは介護保険認定のための「かかりつけ医」の意見ではなく、「入院中の医師」の意見を聞くということです。



▼開始時の運用が大きく変わる

つまり、訪問・通所リハビリを開始する場合、今まではケアマネジャーからの依頼で開始していたものが、①医療機関へのリハビリ実施計画書の取り寄せ、②退院時カンファレンスへの参加、③ケアマネジャーによる医療機関の担当医師への意見の取り寄せが必要になります。これらは、利用開始前の取り組みであり、訪問・通所リハビリのリハビリ職は、「受け身」ではなく、自ら「積極的」に動いていく必要があるでしょう。医療機関やケアマネジャーと調整しながら、退院後すぐに利用開始できるように、どんどん動いていかなければなりません。

▼リハビリ職の動きで稼働率が変わる?

利用開始前に訪問・通所リハビリのリハビリ職が積極的に動く事業所とそうでない事業所では、今後、新規利用者の紹介件数が大きく変わってくることが予測されます。筆者の支援先のケアマネジャーに「どんな事業所を紹介したいですか」と聞いたところ「早く受け入れてくれる事業所」と即答されました。これから訪問・通所リハビリのリハビリ職は利用者に対するリハビリの知識・技術だけではなく、医療機関やケアマネジャーとの調整力や医療から介護移行時のリーダーシップが求められるでしょう。


【2024. 2. 15 Vol.586 医業情報ダイジェスト】