組織・人材育成

聞いていると言う院長先生vs聞いていないと主張するスタッフ

組織の強みが活かせる組織づくりを考える
株式会社メディフローラ 代表取締役 上村 久子
新年がスタートしましたが年度で言うとあと3か月!来年度の経営計画の作成など、そろそろ新年度に向けた話し合いがスタートし始める組織もあると思います。
今回は同じ話し合いの空間にいながらも「聞いていない!」と感じるスタッフに戸惑う院長先生の事例から、組織の強みが活かせる組織づくりを考えましょう。

今回もめまぐるしく変化する医療業界で努力される皆さまをご紹介することで、少しでも皆さまの組織のお役に立てることが出来たら幸いです。

ケース:

「先生はいつも私の意見を聞いてくれない!言いくるめようとする!」とはこのクリニックで5年ほど勤務する受付担当の女性Aさん。この日は全体研修にてチームの意見をひとつにまとめる「合意」をテーマにワークを行っていました。
 お仕事で行う合意を疑似体験できるよう、難しくはないものの明確に正しい答えのないワークを実施。結論に向けて話し合いが進んでいるようにみえましたが、段々とAさんは納得いかない表情に。結果、研修終了後思いが溢れてしまったようです。

院長先生「全く困ってしまいました…私としてはグループ(4名)全員が意見を言い合っていたし、もちろんAさんが意見を言う時間も十分ありました。聞いていないと言われてもAさんの勘違いだし…実はこういうことは今までにも度々あるんです」

そこで、思い出される会話を院長先生に振り返っていただきました。
その日に勤務していない人に対して連絡ノートを作ろうとなった時のお話です。

Aさん「でも、そのノートが必要なのは〇〇さん(月2回勤務の非常勤)だけですよね」

院長先生「〇〇さん以外にも午後勤務の非常勤の人もいるから必要だと思うよ」

この後、Aさんは黙り込んでしまいました。
上記の話を思い出しながらヤレヤレといった表情の院長先生にこう声を掛けました。

筆者「確かに、その会話だとAさんの意見が通っていない=Aさんの意見は聞いてもらえていない、と感じる可能性はありますね。話し合いというよりもお互いが一方通行に見えます。一方通行ではない話し合いを行うために、Aさんの立場になってみましょう。Aさんはなぜ〇〇さんだけが必要だと思ったのでしょうか。Aさんは午後だけの勤務の方など非常勤で働いている方が他にもいることを当然知っていたはずですよね?例えば、〇〇さん以外の人には連絡内容がしっかり伝わっているけど〇〇さんに特別伝わりにくい、とか何かしら理由があるのではないですか?」

院長先生「そう言われてみればそうですね。Aさんは周りが見えていないだけかと思っていましたが、なぜそういうことを言っているのか特に考えなかったです…そうか…相手が考える理由は相手しか分からないはずなのに、勝手に理解したつもりになっていました。聞けばよかったのですね」

この日から院長先生の「相手を理解するために質問する力を磨く」特訓が始まったのでした。

このケース、どのような感想を持ちましたか?
以前にも同様に「言ったvs言っていない」というケースをご紹介し、どうしたら相手に情報が伝わるのかということをご説明しました。今回は、相手が言ったことが自分に伝わったということをどう理解してもらうか、ということがポイントです。キーワードは「聴き方」です。

相手に対して「ちゃんと聞いていますよ」ということを伝えるためのテクニックはあります。そのいくつかを以下にご紹介します。
  • 相手の方を向く
  • 相手と適切な距離を持つ
  • 頷くなど聞いているサインを出す
  •  相手が言ったことを自分の言葉で繰り返す (オウム返しではない)
要するに、相手とその考えに興味を持ち、相手の話を聞いて受け取った内容を伝えて確認するということです。もちろん相手との関係性においてこのようなやり取りをしなくとも、お互いの考えや思いが理解出来ている状態であれば、その通りではなくとも良いと思います。ただ、新人さんや上司・部下など立場が異なる関係など、お互いに思いの丈を自由にぶつけ合えるような確固とした信頼関係が築けていない場合には、丁寧な話し合いが必要だと考えます。
相手が話している場にいるだけでは、残念ながら相手の話を聞いていることにはならないことが多いようです。聴き方を意識して過ごしてみませんか?


【2023. 1. 15 Vol.560 医業情報ダイジェスト】