組織・人材育成

人事評価の機能と内部条件の改善

原因分析の基本と中間項
株式会社To Doビズ 代表取締役 篠塚 功
人事評価に求められる重要な機能は、単に部下に点数を付けて賃金を決めることではなく、部下の強み、弱みといった育成ポイントを見つけて育成することと、部下の目標達成を支援し、その結果、部署の目標を達成して組織業績を最大化することにあります。長年人事評価を運用しているにもかかわらず、人が育っていないとか、組織が発展していないとすれば、それは、人事評価の機能が発揮されていないことになります。そこで今回は、人事評価の機能とその運用について考えます。

人事評価の機能

人事評価の機能を図に示しました。まず、部下一人一人の役割や目標を明確にします。そして、目標の達成や、担当している業務の遂行に向け努力してもらいます。そうすると、目標が達成できたとかできなかった、担当業務にミスがあったというように必ず結果が出ます。その結果を評価し、結果が出た原因や、行動や能力における問題点等を分析し部下にフィードバックします。この時に、育成点を明確にし、部下とともに育成計画を立て、次の評価期間における目標を設定し活動していくわけです。このようなサイクルの中で、部下はこの上司の下であれば、自分の課題に気づくといった学習もでき、自分がここで成長できそうだと感じられることでしょう。学習することができれば、仕事への関心も高まり上司を信頼することもでき、その組織に長く残ってもらえるものと考えます。すなわち、図に示したサイクルを回し続けることで部下は成長し、成長した部下が目標を達成することで、組織目標も達成し組織は発展します。

人事評価を上手く運用することで、管理職が果たすべき役割である、部下一人一人を育成しマネジメントするというメンテナンス機能と、部署の目標を達成し組織業績を最大化するというパフォーマンス機能を発揮できるのです。
もちろん、人事評価を使わなくても、この2機能を十分発揮できる管理職はいます。しかし、組織というのは、どのような管理職であっても、その役割を果たせるような仕組みを整備し運用しなければいけません。この仕組みが人事評価ですが、このように運用が行われるためには、まずは管理職に、人事評価の必要性とこのツールを使って果たすべき役割を理解してもらわなければなりません。研修等で原因分析の重要性や方法を伝える必要があるのです。

原因分析の基本と中間項

仕事をした結果から、部下の行動や能力における問題点を把握し、部下を育成していかなければならないわけですが、原因分析における重要なポイントは、結果が悪かったからといって部下の能力が劣っているという分析をしてはいけないということです。すなわち、結果と発揮した行動や能力は必ずしもイコールではありません。一生懸命目標達成に向けて努力したけれども、目標が達成できなかったということは、たびたび起こります。例えば、筆者は、昨年12月に実行すべき計画のおよそ3割は未達に終わりました。これは、クライアントの病院でコロナのクラスターが発生したことと自ら体調を崩したことが原因であり、自分の能力に問題があったわけではありません。このように、行動・能力と結果はイコールではなく、両者の間には何らかの障害が起こることがあります。これを人事評価では「中間項」と呼び、コロナのような外部環境を「外部条件」、自己の体調不良などの病気を「本人条件」と言います。すなわち、これらをニュートラルな状態において能力等の分析を行う必要があるわけです。

そして、中間項を見つめる上で最も重要なことは、「内部条件」だと言えます。内部条件とは、組織の内部の問題点等です。例えば、上司の指示の仕方に問題がある、部署の中で意思統一が図れていない等々、職員の目標達成や意欲に影響を与える内部環境のことです。この内部条件を見つけ改善することは、人が成長できる組織を作る上で大変重要なことと考えます。人の行動や成長には、当然、その人の考えや人間性、能力が影響しますが、もう一つ大事なことは環境です。同じように意欲と理想を持ち入職した新人が、ものすごく成長する部署と、やる気を失わせ駄目にする部署が存在します。それは内部環境に問題があるわけです。人事評価における部下の原因分析を行う中で、特に内部条件について把握する必要があります。そして、内部条件に問題があれば、まずその問題を改善しなければならないことは言うまでもありません。人事評価の機能として、内部条件にいち早く気づき改善することも大事なことであると考えます。




【2023. 2. 1 Vol.561 医業情報ダイジェスト】