組織・人材育成

人事評価結果のフィードバックのポイント

フィードバックの準備としての原因分析
病院人事コンサル 株式会社To Doビズ 代表取締役 篠塚 功
以前読んだマネジメントの本の中に、結果から学習することの重要性が書かれていました。例えば、部下が行動し、よくない結果になったとしましょう。上司が、その結果の原因を理解できるようにサポートすれば、結果から学ぶことができるため、たとえ失敗したとしても学習することができ、ポジティブなエネルギーが生まれます。

これは、人事評価の結果があまりよくなかったとしても、その原因を理解できるように上司が部下にフィードバックし、部下がそれによって学習ができ、「この上司の下でなら自分は成長できる」という成長予感を感じられれば、人事評価の結果に不満を持つことはないという自分の考えと同じです。すなわち、職員が人事評価の結果に納得するか否かは、上司の原因分析とフィードバックにかかっています。そこで今回は、人事評価結果の原因分析とフィードバックについて考えます。

フィードバックの準備としての原因分析

原因分析のポイントは、初めから部下の行動や能力は劣っているというアプローチはしないことです。例えば、目標が達成できなかったとすれば、何か原因があったのではないかという「おもいやり」の視点が大切です。仕事の結果と能力や行動は必ずしもイコールではなく、両者の間には、外部条件、内部条件、本人条件といった中間項があります。
外部条件とは、新型コロナウイルスの感染拡大によって目標が達成できなかったとか、診療報酬の改定が不利に働いたといったような、外部的な要因を言います。内部条件とは、病院や各部署の内部の問題、例えば、組織の指揮命令系統に問題があったとか、上司の指示に問題があったような場合を言います。本人条件とは、本人の身体的、精神的な面で問題がなかったかということです。

原因分析は、部下の目標達成度の評価や仕事の結果を基に行います。まず初めに、目標が達成しなかった部分や仕事でミスが多かったことに目を向けます。そしてそれらが、部下のポジションから見てレベル的にどうであったかを確認します。次に、中間項に目を向けます。目標のレベルが妥当なものであったにも関わらず目標が達成できなかったとしても、すぐに部下の能力等に問題があったとは捉えず、部下を取り巻く諸要因である中間項を見ていきます。続いて、情意評価のようなプロセスの行動に問題がなかったかの確認をします。そして、最後に能力に目を向けます。目標達成に影響した能力、仕事にミスを生じさせる原因となった能力を明らかにし、育成面接で部下へフィードバックするとともに能力の育成計画等を部下とともに考えます。

上司の分析が的確で部下が納得できるものなら、部下は上司を信頼し、その上司の下で頑張ってくれるでしょう。すなわち、人事評価が職員に納得感のあるものとして定着するか否かは、上司の原因分析にあるといっても過言ではありません。分析メモから育成メモを書きフィードバックする 育成面接で分析したことを上手くフィードバックしなければなりません。分析メモから育成メモを作るポイントを図に示しました。面接の導入からエンディングまで、シナリオを描いておけば、確実に部下へフィードバックできると考えます。

では、図を確認しましょう。面接の導入部では、仕事のレベルや中間項に着目して話題を整理しておきます。例えば、上司の指示に誤りがあったとすれば、面接の冒頭で謝ることも必要です。また、目標が部下のポジションから見て難しいものであったとすれば、その労をねぎらうべきです。次にほめる点を目標で達成できたものや、情意面でよかったものの中から整理しておきます。そして、ほめた後に、注意する点を伝えます。注意する点は、目標で達成できなかったものや情意面で問題だったものについて、事実に基づいて注意する事柄を整理しておきます。そして、次に育成点を整理します。例えば、知識や技能という能力の面で思わしくなかった点と優れていた点を整理します。そしてこれらを基に、2~3年後のキャリア形成目標などを考え、短期・中期の能力開発のプランを考えておくとよいでしょう。最後に、エンディングですが、部下の努力をねぎらうとともに、能力で優れていた点や情意(姿勢・行動)でよかった点をほめて、部下の意欲を引き出して終了とします。




【2023. 10. 1 Vol.577  医業情報ダイジェスト】