組織・人材育成
「お金」を理解すると行動が変わる
「お金」の意識を持つことで現場レベルでの改善が起こったケース
組織力アップトレーナー 株式会社メディフローラ 代表取締役 上村 久子24年度の医療と介護・福祉サービスの同時改定とともに、昨今の物価高も経営に当たって大きな懸念事項となっていることと思います。さて、今回は数々の組織において立て直しを図ってきた理事長との経営改善事例から、職員が「お金」の意識を持つことで現場レベルでの改善が起こった事例をご紹介したいと思います。
ケース:
日本の北の方、美しい田園風景が広がるなか、クリニックを含む複数の事業所を運営する法人のお話です。この法人代表を務めていた方が急逝したことで友人であったAさんに遺族から「法人代表となってほしい」と声が掛かりました。引き受けたところ、この法人の経営状況は火の車!亡くなられた代表以外、法人の経営状況を正しく把握していた方はいませんでした。Aさんは「大変なものを引き受けたが、これも何かのご縁だから出来る限りのことは尽くす」とAさんが新代表になったことを発表した経営会議で伝えたのでした。
Aさんはもともと日本の南の方で法人の組織改革を行ってきた経験がありました。その経験から「医療機関だから潰れないだろうと高を括る現場の人をどう巻き込むか」を考え、現場の改革に取り掛かりました。この法人にとってAさんは「よそ者」。現場をラウンドし、職員にヒアリングを重ねるも職員が危機感を全く持っていないことに危機感を感じたとAさんは語ります。
Aさん「よそ者が突然来ることになってしまった経緯を全く理解していない。経営状況を分かっていないから改革の必要性が分かっていないし、そもそも自分たちが行ってきたことが正しいと無条件で信じている状況です」
そこでAさんは経営改善会議と称して毎週1回、現場の管理職はもちろん、自らヒアリングを重ねた結果「若く向上心は高いが役職者に空きが無い(退職しない)ため職場で管理職等の登用を見送られ続けている人」を会議に招き、直近の月の損益計算書と貸借対照表を配り、まず経営状態を説明することにしました。
Aさん「ここが売上で皆さんの今の努力ですね。この部分が赤字です。この部分が皆さんの給与に当たります。私はこの改革に当たり1円もこの法人から役員報酬をいただいておりません。その状況でこの赤字です。当然給与は減らしたくないですよね?そうなるともっと売上を上げることが出来れば良いのです。ここまでは分かりましたか?」
代表自ら行う丁寧な説明に、職員は頷きます。
Aさん「では問題です!この〇〇万円の赤字をゼロにするためには、1日にいくら売り上げることが出来れば良いですか?」
それぞれが赤字の金額を電卓で日割りします。
職員「〇円です」
Aさん「そうですね。実際にどういう努力をしたら良いか何となく見えてきましたか?」
その後、診療報酬の点数本を持ち寄る若手経営改善メンバー達。自分たちがサービスとして行ってきた生活支援などが診療報酬として認められていることを発見したり、自分たちが研修を受けることが法人収入となることに気が付いたり、週に1回の経営改善会議で少しずつ改善の方向性が見えてきたのでした。Aさんは静かに、動かない現役管理職と積極的に動く若手メンバーを観察しており、雰囲気としても組織を動かすメンバーの入れ替えが確実に行われつつあります。本格的な人事の入れ替えまでのカウントダウンは始まっています。
このケース、どのような感想を持ちましたか?
このケースは実際に法人が立ち行かなくなるリスクが極めて高いということもあり、改善の必要性を強く意識できた職員を中心に改善に動くことが出来ました。そう聞くと当たり前のように聞こえるかもしれませんが、危機感を抱いても実際に「自分にも起こっている問題である」という当事者意識を持つことが出来ない職員ばかりでは、このような改善に至らないことも少なくないようです。
また、ここまでの状況に陥らないと気合が入らないというご意見もあるかもしれません。もっと言うと、お金事情を職員に伝えることに抵抗感を持つ方もいるでしょうか。私は医療機関という公的な意味合いの強い法人だからこそ、「お金」の話もしっかり行える組織が強いと感じています。
今回は今まであまり踏み込んでこなかったお金について記しました。このケースが改善の一助になれば幸いです。
【2023. 10. 1 Vol.577 医業情報ダイジェスト】
Aさんはもともと日本の南の方で法人の組織改革を行ってきた経験がありました。その経験から「医療機関だから潰れないだろうと高を括る現場の人をどう巻き込むか」を考え、現場の改革に取り掛かりました。この法人にとってAさんは「よそ者」。現場をラウンドし、職員にヒアリングを重ねるも職員が危機感を全く持っていないことに危機感を感じたとAさんは語ります。
Aさん「よそ者が突然来ることになってしまった経緯を全く理解していない。経営状況を分かっていないから改革の必要性が分かっていないし、そもそも自分たちが行ってきたことが正しいと無条件で信じている状況です」
そこでAさんは経営改善会議と称して毎週1回、現場の管理職はもちろん、自らヒアリングを重ねた結果「若く向上心は高いが役職者に空きが無い(退職しない)ため職場で管理職等の登用を見送られ続けている人」を会議に招き、直近の月の損益計算書と貸借対照表を配り、まず経営状態を説明することにしました。
Aさん「ここが売上で皆さんの今の努力ですね。この部分が赤字です。この部分が皆さんの給与に当たります。私はこの改革に当たり1円もこの法人から役員報酬をいただいておりません。その状況でこの赤字です。当然給与は減らしたくないですよね?そうなるともっと売上を上げることが出来れば良いのです。ここまでは分かりましたか?」
代表自ら行う丁寧な説明に、職員は頷きます。
Aさん「では問題です!この〇〇万円の赤字をゼロにするためには、1日にいくら売り上げることが出来れば良いですか?」
それぞれが赤字の金額を電卓で日割りします。
職員「〇円です」
Aさん「そうですね。実際にどういう努力をしたら良いか何となく見えてきましたか?」
その後、診療報酬の点数本を持ち寄る若手経営改善メンバー達。自分たちがサービスとして行ってきた生活支援などが診療報酬として認められていることを発見したり、自分たちが研修を受けることが法人収入となることに気が付いたり、週に1回の経営改善会議で少しずつ改善の方向性が見えてきたのでした。Aさんは静かに、動かない現役管理職と積極的に動く若手メンバーを観察しており、雰囲気としても組織を動かすメンバーの入れ替えが確実に行われつつあります。本格的な人事の入れ替えまでのカウントダウンは始まっています。
このケース、どのような感想を持ちましたか?
このケースは実際に法人が立ち行かなくなるリスクが極めて高いということもあり、改善の必要性を強く意識できた職員を中心に改善に動くことが出来ました。そう聞くと当たり前のように聞こえるかもしれませんが、危機感を抱いても実際に「自分にも起こっている問題である」という当事者意識を持つことが出来ない職員ばかりでは、このような改善に至らないことも少なくないようです。
また、ここまでの状況に陥らないと気合が入らないというご意見もあるかもしれません。もっと言うと、お金事情を職員に伝えることに抵抗感を持つ方もいるでしょうか。私は医療機関という公的な意味合いの強い法人だからこそ、「お金」の話もしっかり行える組織が強いと感じています。
今回は今まであまり踏み込んでこなかったお金について記しました。このケースが改善の一助になれば幸いです。
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