組織・人材育成

リーダーは1年の初めに自部署のビジョンや目標を語ろう

自部署のビジョンや目標の伝達のポイント
株式会社To Doビズ 代表取締役 篠塚 功
あけましておめでとうございます。本年も医療機関における人事・労務について、さまざまな視点で捉えていきますので、ご愛読賜りますようお願い申し上げます。

昨年も、多くの病院で管理職や指導職の研修をさせていただく機会を頂戴できたことに、大変感謝しています。多くのリーダーが、今後ビジョナリーリーダーとしてスタッフの意欲を引き出し、医療従事者が生き生きと働ける職場を作ることを期待しています。

ビジョナリーリーダーとは、ビジョンを構築して、スタッフみんなを引っ張っていける人であり、かつ、抽象的になりやすいビジョンを分かりやすくスタッフに説明できる人のことを言います。そして、ビジョンは毎年、1月の初めに、できればその年の目標と併せて語ることが、スタッフのモチベーションを高める上で効果的ではないでしょうか。そこで、今回は、リーダーに求められることと、その1つとしてのビジョンや目標を語るポイントについて考えます。

これからのリーダーに求められること
一言でリーダーといっても、置かれているポジションで、マネジメントの大きさは異なります。例えば、院長という病院管理者であれば、病院全体のマネジメントという役割を負ったリーダーであり、病棟師長であれば、病棟のマネジメントという役割を負ったリーダーということになります。このように職位によって、マネジメントの大きさは異なりますが、任せられた所をマネジメントする役割を担うという点では共通です。
そして、リーダーの役割として最も重要なことは、リーダーシップを発揮してもらうことでしょう。このリーダーシップについて、病院機能評価では、以前は「病院管理者・幹部は病院運営にリーダーシップを発揮している」という評価項目で評価を行っていました(現在は若干異なる)。そして、この評価項目において示された評価の要素が、まさにリーダーシップとは何かを表していると共感できます。

例えば、評価の要素の1番目には「病院の将来像の職員への明示」が挙げられており、これこそ、病院管理者・幹部が、リーダーとしてやるべきことでしょう。そして、このことは、病棟師長などの管理職でも同じです。明示する相手が病棟スタッフに限られるだけで、病棟師長やリハビリテーション科の科長は、自部署の将来像、すなわち自部署のビジョン(自部署のあるべき姿)をスタッフ全員に分かりやすく、具体的な言葉で語る必要があるのです。
また、評価の要素の2番目には「運営上の課題の明確化とその解決に向けた関わり」が挙げられていますが、これもリーダーシップの発揮として重要なことです。この課題は、管理職であれば、自部署の課題ということになり、そして、課題を明確化する方法は、部署の年度目標の中に示していくことになります。すなわち、ビジョンの達成というのは1つ1つの課題を解決することによって成し得るのです。

自部署のビジョンや目標の伝達のポイント
「日本で1番のリハビリテーションを目指す」というビジョンを掲げ、それだけをスタッフに伝えても、スタッフは何をしてよいか分かりません。科長が考えている日本一のリハビリテーションの姿を具体的に箇条書き等で示すとともに、そのために現在ある課題を明確にして、今年の部署目標として、スタッフに説明することでスタッフも上司が目指している日本一のリハビリテーションの姿を理解できるのです。そして、自部署のビジョンに共感してもらうことができれば、ビジョンの達成に向けた部署目標を、スタッフの個人目標にブレイクダウンしやすくなりますし、スタッフの意欲を引き出すこともできます。

まずは、新年の初めに、自部署のビジョンや目標を分かりやすい言葉で熱意を持って、スタッフ全員に伝えてみてはどうでしょう。それを基に、スタッフが、新年度の自らの目標を真剣に考え、部署の目標達成に貢献する自己の目標を立ててくれれば、リーダーシップが上手く発揮できたことになります。

部署のビジョンや目標を伝達するポイントとしては、次の7項目を特にお願いしています。①自分の言葉でスタッフ全員に熱く語りかけてほしい、②部署の目標については、内容とゴールを明確に示し、管理職が率先垂範して達成するという姿勢を示してほしい、③ビジョンという抽象的で概念的なメッセージを理解してもらうために、具体例をたくさん挙げて説明してほしい、④できるだけシンプルな内容で、分かりやすい言葉で伝えてほしい、⑤スタッフの意見を聴き、反対意見等に対しても逃げずに議論してほしい、⑥組織の情報はスタッフ全員に包み隠さず伝えてほしい、⑦理解したかどうかを確認するために質問をしてほしい。


【2024. 1. 1 Vol.583 医業情報ダイジェスト】