組織・人材育成

部署の目標達成と個人の目標設定の具体例の作成

部署の目標達成を実現するためのインセンティブについて考える
株式会社To Doビズ 代表取締役 篠塚 功
某病院の人事評価委員会に参加したところ、人事・賃金制度について、職員の理解を深めるための音声付きの説明資料を作成したという報告がありました。その資料に対して、委員の1人から、目標設定の具体例があるとさらによくなるという意見があったので、「目標設定の具体例は、各部署の管理職が、部署の目標を達成するために、部下に具体的にどのようなことをしてもらいたいかを考えて書き出したほうがよい」とお伝えしました。なぜなら、どうせ目標設定の例を作るのであれば、部署の目標達成を目指した内容のほうが実践的であるからです。

そこで今回は、管理職が部署の目標達成と、部下に目標の立て方を理解してもらうことの両面で効果的な目標設定の具体例の作り方と、部署の目標達成を実現するためのインセンティブについて考えます。

部署の目標の立て方と個人の目標設定の具体例の作り方

部署の目標を立てるようになった病院で、実際にどのような目標を立てられているのか、確認させていただくと、例えば、病棟の看護部門の目標で、「病棟収益の改善」「患者サービス向上」といったスローガン的な目標が示されることがあります。目標に挙げたテーマは素晴らしいのですが、これだけでは部署の目標が達成したか否かの判定もできませんし、達成できるかどうかも分かりません。

部署の目標は、表に示した例のように、①目標項目を達成するための②重要成功要因、③KPI(重要業績評価指標)、目標とする指標の④現状値と⑤目標値、⑥アクションプラン(行動計画)、⑦担当者名を明確にすることで、達成結果を把握することが可能となり、その結果を賞与に反映させることもできます。また、部署の目標について、定期的に会議等で各担当者に進捗を報告してもらい、数値やデッドライン(締め切り)等を確認して、必要に応じて支援等を行うことで、各個人の目標が達成され、その結果、部署の目標を達成させることが
できます。
導入当初は、部下はどのように目標を立ててよいのか分からないのですから、まずは、管理職が、何を、どの程度、どのような方法で、いつまでにすれば、その目標が達成できるのか、例えば、表の例で言えば、DPCⅡ期以内退院数を増やすための具体的方策を考え、目標設定の具体例として示し、これについては、Aさん、Bさん、Cさんにお願いしたいと依頼し目標としてもらえばよいのです。すなわち、委員会でお伝えしたように、記入例が実際の目標管理に活用されることになります。
目標管理は、本来、「Management By Objectivesthrough Self Control」であり、自ら目標を設定しコントロールすべきものですが、上手く運用されるまでは、上司がお手本を示すことが必要です。それによって、最終的に部下が自律して、部署の目標達成に向けた自己の目標が立てられ活動できるようになれば、管理職の重要な役割である人材マネジメントがしやすくなるでしょう。

部署の目標達成とインセンティブ

上司から与えられた目標であっても、何とか達成できたという達成感と、自分が目標を達成したことで部署の目標も達成でき、さらにそのことを上司から称賛されることは、部下にとって大きな報酬と言えましょう。そして、また次回も部署の目標を達成するために、自己の目標を立てて頑張ろうというモチベーションが上がることと思います。
このモチベーションを維持させることと、部署の目標達成を病院が認め称える方法として、結果を賞与に反映させてはどうかと考えます。すなわち、自己の目標を達成することで、人事評価の結果が高くなり、賞与が上がるだけではなく、みんなの力で部署の目標を達成したのですから、部署の目標達成度を明確に賞与に反映させることで、さらに部下の意欲を高めることができるのではないでしょうか。

例えば、賞与の50%を個人業績賞与とし、残り50%を部署業績賞与とした場合、個人の目標管理を中心とした人事評価の結果を個人業績賞与に反映させ、部署の目標の達成結果を部署業績賞与に反映させればよいのです。部署の目標達成度を評価するためには、部署目標の達成結果を数値でとらえる必要がありますので、先述のKPIという形で評価をすることが重要であり、また、部署の目標は、当然、病院の事業計画から落とし込まれたものであり、各部署が目標を達成することで、病院の事業計画も達成できるのです。

表:病棟目標の例(一部抜粋)



【2024. 2. 15 Vol.586 医業情報ダイジェスト】