組織・人材育成
病院における人材マネジメントの重要性と人事・賃金制度の構築
人という資源の活用如何で経営が決まる
株式会社To Doビズ 代表取締役 篠塚 功
経営に必要なもの(経営資源)は主に人、物、金、情報、時間と言われます。例えば、病院においては、診療報酬という公定価格の中で経営を維持しなければならないわけですから、診療報酬がどのように改定されるのかといった情報は、経営における意思決定をしていく上で極めて重要な資源になるでしょう。
しかし、このような重要な情報や物、お金、時間を使う人がいて、病院の運営や経営が行われるわけですから、強いて優先順位をつけるなら、人が最も重要ではないでしょうか。特に人件費比率が優に50%を超える労働集約型産業である病院においては、人という資源の活用如何で経営が決まるといっても過言ではありません。
実際、筆者が支援している病院の運営を見ていると、常に、人の採用や、人に関する問題で、幹部が時間を取られているように感じます。本来であれば、各部署のマネージャーが適切に人材マネジメントをできていれば、幹部の手を煩わせることはないでしょうし、賃金制度なども整備されていれば、幹部が採用時に応募者の賃金などを検討する時間も必要ないでしょう。
また、人材マネジメントが効果的に行われれば、10人で行っていた仕事を9人で行うことも可能になるはずです。厚労省の病院経営管理指標(令和3年度調査)によると一般病院の職員1人あたり人件費は6,768千円ですから、これだけの費用を減らすことにもなり、まさに病院経営にプラスになります。
そこで今回は、人材マネジメントの仕組みとしての「人事・賃金制度の構築」について考えます。
しかし、このような重要な情報や物、お金、時間を使う人がいて、病院の運営や経営が行われるわけですから、強いて優先順位をつけるなら、人が最も重要ではないでしょうか。特に人件費比率が優に50%を超える労働集約型産業である病院においては、人という資源の活用如何で経営が決まるといっても過言ではありません。
実際、筆者が支援している病院の運営を見ていると、常に、人の採用や、人に関する問題で、幹部が時間を取られているように感じます。本来であれば、各部署のマネージャーが適切に人材マネジメントをできていれば、幹部の手を煩わせることはないでしょうし、賃金制度なども整備されていれば、幹部が採用時に応募者の賃金などを検討する時間も必要ないでしょう。
また、人材マネジメントが効果的に行われれば、10人で行っていた仕事を9人で行うことも可能になるはずです。厚労省の病院経営管理指標(令和3年度調査)によると一般病院の職員1人あたり人件費は6,768千円ですから、これだけの費用を減らすことにもなり、まさに病院経営にプラスになります。
そこで今回は、人材マネジメントの仕組みとしての「人事・賃金制度の構築」について考えます。
人材マネジメントの仕組みとしての人事・賃金制度
職員には、必ず仕事をしたことの見返りとして賃金が支払われるわけですから、組織には何らかの賃金制度があるはずです。しかしながら、病院の場合、職員が500人以上もいる組織であっても、賃金表を持たずに運用し、とても制度があるとは言えない所もあります。また、賃金表は存在するが、年功的に昇給していくような運用を今でもしている所も多く見られます。職員の仕事の大きさと評価によって病院への貢献度合いを測り、それに応じて賃金で差を付けるような仕組みがなければ、上司は、部下の意欲を引き出し、上手くマネジメントをすることはできないと思われます。
また、仕事の大きさは、その仕事に求められる能力や役割等で判断することが可能であり、資格等級という形で示すことができます。そして、等級を決め上下させる仕組みを等級制度と言います。
したがって、人事・賃金制度は、等級制度、賃金制度、人事評価制度で構成されます。例えば、中堅職員の役割を担う者は3等級、師長の役割を担う者は7等級と決めれば、賃金は、下位等級から上位等級に向けて水準が上がっていくことになります。そして、師長の役割を担えるか否かは、主に人事評価の結果から判断されるべきでしょう。日常的に主任としての役割を十分果たして良い結果を残していることから、今度は上位の役割である師長を任せようということになるわけです。
人事評価の結果で等級が決まり、等級に応じて賃金水準が決まり、昇給や賞与が決まります。職員は上司に公正に評価されることで、自らの処遇が決まるわけですから、上司を信頼し、上司の判断や指示にしたがい、業務に専念するわけです。
このような形で職員の意欲や行動を引き出すことを「外発的動機づけ」と言います。ただ最近は、職員の意欲を引き出すには、お金や地位に関係なく自分の心の中から湧き上がるように「やりたい」という気持ちになる「内発的動機づけ」が重要と言われます。しかし、そのような職場環境を作ることは、実際には非常に難しく、内発的動機づけを提唱する学者も、賃金や上司の評価を軽視してよいということではないとしています。適正な賃金や評価が行われていない職場環境では、内発的動機づけは起こり難いと言われており、まずは、外発的動機づけの仕組みを構築することが基本と言えましょう。
また、仕事の大きさは、その仕事に求められる能力や役割等で判断することが可能であり、資格等級という形で示すことができます。そして、等級を決め上下させる仕組みを等級制度と言います。
したがって、人事・賃金制度は、等級制度、賃金制度、人事評価制度で構成されます。例えば、中堅職員の役割を担う者は3等級、師長の役割を担う者は7等級と決めれば、賃金は、下位等級から上位等級に向けて水準が上がっていくことになります。そして、師長の役割を担えるか否かは、主に人事評価の結果から判断されるべきでしょう。日常的に主任としての役割を十分果たして良い結果を残していることから、今度は上位の役割である師長を任せようということになるわけです。
人事評価の結果で等級が決まり、等級に応じて賃金水準が決まり、昇給や賞与が決まります。職員は上司に公正に評価されることで、自らの処遇が決まるわけですから、上司を信頼し、上司の判断や指示にしたがい、業務に専念するわけです。
このような形で職員の意欲や行動を引き出すことを「外発的動機づけ」と言います。ただ最近は、職員の意欲を引き出すには、お金や地位に関係なく自分の心の中から湧き上がるように「やりたい」という気持ちになる「内発的動機づけ」が重要と言われます。しかし、そのような職場環境を作ることは、実際には非常に難しく、内発的動機づけを提唱する学者も、賃金や上司の評価を軽視してよいということではないとしています。適正な賃金や評価が行われていない職場環境では、内発的動機づけは起こり難いと言われており、まずは、外発的動機づけの仕組みを構築することが基本と言えましょう。
人事・賃金制度構築の手順とスケジュール
人事・賃金制度を構築する手順としては、等級制度を整備して人事・賃金制度の骨格を固め、その後、賃金制度、人事評価制度の整備へと進めます。そして、これらの制度構築には1年を見ればよいと考えます。令和6年度の診療報酬改定では、ベースアップ評価料が新設されて、賃上げの原資が確保できることを考えると、これを活用して新しい賃金表を作るとすれば、今年であれば、資格等級フレームを作成したら、直ちに賃金表の作成に取りかかるとよいでしょう。いずれにしても、人事・賃金制度は、人と組織のマネジメントを行う上で必須の仕組みであり、現段階で未整備の病院等においては、至急、構築に取り組むべきだと考えます。
【2024. 5. 1 Vol.591 医業情報ダイジェスト】
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